「…できた!!」
珍しくアリスが集中して机に向かっていました。
お勉強…では無さそうです。
「手が疲れちゃった」
「ちょっと休憩しよっと」
アリスが部屋を見渡すと、ラッキーは部屋に居ませんでした。
集中しているのを邪魔するのは悪いと気をきかせたのでしょうか。
「もう!どこ行っちゃったの!」
アリスはどうやらお手紙を書いていたようです。
実は昨日、街にお出かけした際にこんなやりとりがありました。
『…アリス、何見てるの?』
『これ見て!綺麗な便箋だよ』
『買うの?誰に書くのかしら』
『うーん…じゃあ秘密!』

そして買ってきたのは白地にラメで縁取りのしてある、如何にも女の子が好きそうな便箋です。
ちょっとこすったら剥がれて爪に付きそうです。
しばらくして、ラッキーが帰ってきました。
「…寝てるじゃない」
「見ちゃだめ、と言われたから大人しく出ていったのに」
「全く、私はどうしたらいいのかしら」
ラッキーは静かにベッドに登って丸くなりました。
眠くないので寝たフリをしています。
その数分後にアリスが起きてきました。
「あれ、寝ちゃった…」
「ラッキー、今何時…?」
若干寝ぼけているのを見てラッキーが苦笑いしています。
「おはよう、何してたのかしら」
「…あ!!」
アリスが慌てて机の上の便箋を片付けました。
読みもしないのに置いてある小説に雑に挟んでから振り返りました。
「み、見ちゃだめ…」
「何も見てないわよ、今戻ってきたばっかりなのに」
「ちょっとあっち向いてて!」
ラッキーがやはり苦笑いしながら後ろを向きます。
アリスは子供ね、という文章が息を吐くように頭に浮かびました。
「はい、良いよ!」
「…一応聞いておくけど、何してたのかしら」
「何もしてないって言ってるでしょ!」
「ふーん、お勉強してるかと思ったんだけど」
「あ…うん、お勉強してたんだよ?」
相変わらず滅茶苦茶なことを言っています。
「お勉強ね、お利口さんだこと」
「でしょ?もっと褒めてほしいな~」
そこでラッキーが意地悪そうに言いました。
「そういえば、昨日買ってきた便箋ってどうしたのかしら」
「え!」
「あれは…ま、まだ使ってないよ?」
「ちょっと見たいんだけど」
「そ…そう…?」
明らかにアリスが慌てているのを見て笑いそうになっています。
「ま、いいわ」
「お勉強の邪魔するのも悪いわよね」
「そ、そうだよ、お勉強の邪魔しちゃ駄目だよ?」
「じゃあもう少し散歩してこようかしら」
「あ、まって!!」
相変わらず仲の良い二人です。
その翌日のことでした。
早起きしたアリスが何かを探しています。
「あれ、どこ行ったんだろう…おかしいなあ」
「本に挟んだのに…捨てたわけないのに」
どうやら昨日書いていた便箋をどこにやったか忘れてしまったようです。
もちろんラッキーに宛てて書いたものです。
「…どうしよう」
ごそごそと物音がしているのに気づいてラッキーが起きてきました。
アリスはそれに気づいていません。

「…アリス?」
「あ、ラッキー…おはよう」
いつでも元気いっぱいなアリスがこんなにしょんぼりしているのを見て、ラッキーは思わず驚きました。
「あの…どうしたの?」
「…」
渡す予定だった手紙を無くした、なんてラッキーの前で言えません。
「何でもないよ…」
「いや…元気がないわよ」
「…」
アリスは泣いてしまいました。
どうしようもなくなって、これまでのことをラッキーに話しました。
「…そうだったのね」
「…ぐすっ」
「一緒に探してもいいかしら」
「…ん」
二人はしばらく探しましたが、どうにも見つかりません。
「ラッキー、もういいよ…ありがと」
「…」
ラッキーだってこんな様子のアリスは見たくありません。
遠くを見つめながらぼそっと呟きました。
「…ありきたりなこと言うけど」
「お手紙書いてくれたってことだけでとっても嬉しいわ」
「頑張って書いたんだよ?」
「分かってるわよ、そんなの」
「…うん」
珍しくラッキーがアリスに擦り寄ってきました。
その体温を感じて少し安心したのか、アリスが微笑みました。
その数日後。
「…あーあ、退屈ね」
「早く帰ってこないかしら」
友達とお出かけに行ったきり、アリスがなかなか帰ってきません。
「ねこはお留守番だよ、って酷いこと」
「これであの子が帰ってきた時私が居なかったらどうなることやら」
「…」
二人ともすっかり忘れていたのに、ふと手紙のことがラッキーの頭をよぎりました。
「結局、どこ行ったのかしら」
「捨てるわけないのに…不思議ね」
「…?」

何かがラッキーの目に留まりました。
壁と机の間に何か挟まっています。
「これ、もしかして」
すると、ちょうどアリスが帰ってきました。
友達と遊んできたのがとても楽しかったようでご機嫌な様子です。
「ラッキー、ただいま!!」
「おかえり、それより…ちょっと来てくれるかしら」
「なあに?」
挟まっていたのは、アリスがこの前失くした手紙でした。
ほんの少しホコリを被っています。
「わぁ、ラッキーありがと!!」
「良かったわね、見つかって」
「お手紙のことすっかり忘れてたのに、やっぱりラッキーはすごいね!!」
アリスは満面の笑みでラッキーを撫でました。
「それより」
「なあに?」
「これ…読ませて貰ってもいいかしら」
「いいよ、大好きなラッキーに書いたんだもん」
封筒から便箋を出すと、アリスが言いました。
「読んだら感想を教えてね!」
「そうね、じゃあ読ませてもらうわ」
「…えーっと」
『大好きなラッキーへ』
突然、アリスが手紙を封筒にしまってしまいました。
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
「やっぱり見ちゃだめ!!」
「読ませてくれないの…?」
「恥ずかしくなったからだめ!!」
封筒を持ってアリスがどこかに行ってしまいました。
「…ふふ」
「その一行だけで十分嬉しいわよ」
「いつもありがとう」
思わず泣いてしまったのは内緒です。

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