休日の昼下がり。
二人は窓から射し込む日光を浴びてぼーっとしていた。
アリスのお友達は風邪を引いてしまったので遊ぶ約束がキャンセルに。
一方のラッキーはお友達なんて居ないのでいつも通りだが。
ふと、ラッキーがアリスの視線に気づいた。
「ちょっと、何よさっきからじろじろと」
「ん?何でもないよ?」
「嘘よ、何かあるからじろじろ見てたんでしょ」
「何でもないもんね~」
「気になるから教えてちょうだい」
「じゃあ教えない!」
じゃあ、というのがよくわからないが。
アリスが意地悪そうに言うと、ラッキーはいつものように返した。
「…勝手にしなさい」
「もう!ラッキーはノリが悪いなあ!」
「どうせ背中にゴミでも付いてるんでしょ?別に気にしないわ…」
「ふふん、教えないもんね~」
聞いて欲しいのが透けて見える。
心の中でやれやれ、と思いつつラッキーが返す。
「そんなこと言われたら気になるわよ、教えてちょうだい」
「うーん、どうしよっかな~」
「迷っちゃうな~」
「…」
アリスはやはり楽しそうに続ける。
しかし相手をするのに飽きてきたのか、ラッキーがいつものセリフを放った。
「教えてくれないんだったら、今日は一人で寝てよね」
「あ!駄目だってば!」
「おばけが出ても知らないから」
「い、一緒に寝てくれないと教えないよ??」
アリスが如実に焦っているのを見て、ラッキーが苦笑いする。
これでまた意地悪な返しをすると面倒くさくなりそうなので切り上げることにした。

「はいはい、一緒に寝てあげるから…」
「ほんと?嘘じゃないよね?絶対?嘘ついたらご飯なしだよ?」
「相変わらず滅茶苦茶ね」
「…で、何だったのかしら」
アリスがにやにやしながら言った。
「ラッキーさ、最近ちょっと太ったよね?」
「…え」
それを聞いた瞬間、ラッキーはドキッとした。
確かに冬は寒くて出るのが億劫なので家に居ることが多かった。
前々から気にしていることをストレートに言われるとは。
当然ながらアリスの言葉に裏なんて無いのは分かっているが。
「そ、そう…かしら」
「うん」
直球が返ってきてラッキーを直撃する。
うん、の二文字がこれほどの重みを持つとは。
「あまり聞きたくないけど…どこらへんがそう見えるのかしら」
「えー、全部?」
さらに重い二文字が飛んできた。
まさか全部、とは。
一方のアリスは不思議そうな顔でラッキーを見つめている。
純粋無垢とはこのことだろうか。
「ぜ、全部…」
「だって、秋に撮った写真と比べると…ほら見て」
「やめて、見せなくていいわ」
本当は気になって仕方がないが、世の中知らないほうがいい事もある。
できれば聞かなかったことにしたいくらいだ。
さっきまでいい気持ちで日向ぼっこしてたのに、一転してこんなことになるとは。
「ねー、抱っこさせて?」
「駄目」
「あ、気にしてるんだ?」
「あのね…人にそういう話しないほうが良いわよ?」
「ラッキーはねこだもん」
「じゃあアリスがお友達に『なんか太った?』って言われたらどう思うのかしら」
「うーん」
「気のせいじゃない?って言うかな」
「…良いわね、なんというか幸せで」
「?」
ラッキーが平静を装おって立ち上がり、玄関の郵便受けを見に行った。
アリスに捕まって抱っこされないように。
封筒が一通届いているのが見えると、アリスのほうを向いた。
「それよりほら、何か届いてるわよ」
「動きたくないなぁ」
「ラッキー持ってきてよ、一緒に見ようよ」
「…」
封筒を咥えてアリスの元に戻った。
ぽとん、と床に落とすとアリスがそこへにじり寄ってきた。
「はい、ありがと!」
アリスがラッキーを優しく撫でた。
次の瞬間。
「ラッキー?」
「…何?」
「捕まえた!!」
反射的にアリスを引っ掻きそうになるのをなんとか堪えた。
一回だけ服を引っ掻いて少し破ってしまったことがある。
「ちょ、ちょっとやめなさいよ!」
「ラッキーだいすき!」
アリスが思い切り抱きしめてくる。
暴れるわけにもいかないのでラッキーは大人しくしている。
暫くしてアリスがぼそっと言った。
「ラッキー」
「な、何よ」
「どうせ『やっぱり太ったね~』とか言うんでしょ?」
「あ、その話もう忘れてた」
「…」
アリスはゆっくりとラッキーを降ろした。
少しだけ距離を取った位置に座る。
「分かったわよ、運動するから…その話はしないで頂戴」
「うんうん、ラッキーはおりこうさんだね」
「ちなみに、さっき何て言いかけたのかしら」
「え~?どうしよっかな~、教えて欲しい?」
「…」
ある日のことだった。

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