夏の思い出

季節は真夏。
天気予報を信じるなら、今日はずっと雲一つ無い快晴となっている。
昨日まで曇りが続いていたのもあり、やや湿度が高い。

二人は電車で40分の場所にある植物園に向かっていた。
これまで一度も行ったことが無かったのでアリスは文字通りわくわくしている。
前日も言わずもがな。
一方のラッキーはいつも通り冷静な様子だ。

「ラッキーもうすぐだよ」
「もっと涼しいところに行きたかったわ」
「ラッキーは大人なんだから我慢しないとだめだよ」

最寄りの駅に到着すると、アリスが凄く嬉しそうに言った。

「ラッキー、今日はすっごくいい日になる気がするの」
「あなたはなんでそんなに元気なのかしら」
「子供は元気のかたまりなんでしょ?」
「…私が暑すぎて倒れたら助けてよね」
「大丈夫だよ、ラッキーは大人なんだから」
「はぁ」

植物園は山の上に位置していて、麓にあるロープウェイに乗って登っていく流れになっている。
乗り物が大好きなアリスの全身からわくわく感というか、キラキラした何かが溢れているのが分かる。
酔ったらどうするのよ、とラッキーが心の中で呟いた。

「チケット買わなきゃ」
「いくらかしら、猫はどの料金やら」
「緊張するなあ…」

開園してしばらく経っていたのもあり、窓口には誰も並んでいなかった。
アリスがドキドキしながら向かう。

「いらっしゃい」
「えっと…その…チケットください…」

思わず振り返ると、近くのベンチに座って様子を見ていたラッキーがにやにやと笑っていた。
ラッキーが居なくなったとたんにこの有様である。
アリスの「もう!!」という心の叫びが聞こえた。

「子供一人でいいかな」
「あ、えっと…ねこも一人…」
「猫?…ああ、ペットのことかな」
「子供1枚ぶんで大丈夫ですよ」

なんとかチケットを購入したアリスがすぐにラッキーのもとに駆け寄る。

「はい、おまたせ!」
「猫も一人、ね」
「もう!!頑張って買ったんだから褒めてよね!!」
「はいはい、暑いから早く行きましょう」

係員にチケットを提示して、二人がゴンドラに乗り込む。
アリスが腰掛けると、膝の上にラッキーが乗ってきた。

「ラッキー暑くない?大丈夫?」
「まだ大丈夫よ」
「喉が乾いたら言ってね」

所要時間は5分ほど。
ゆっくりと、徐々に高度を上げて山を登っていく。
良い景色に見とれて二人は思わず興奮した。

「良い眺めね」
「すごいなあ、鳥になったら毎日こんな景色が見れるんだね」