2018年の内容を2026年の私が書き直したらどうなるか遊んでみました。
上達が感じられますな。
今日は雨。
珍しくいつもより早く起きたアリスは、窓際に座って雨音を聞いていた。
窓を伝う水滴を指でなぞる。
ふと、以前ラッキーが言っていたセリフを思い出した。
『雪は濡れないから良いわね』
アリスは思わず呟いた。
「雨で濡れるのもたまにはいいのにね」
「…それより」
「ラッキーまだ寝てるの?今日は遅いなあ」
心配になってベッドに戻った。
するとちょうどラッキーが起きてきた。
「あ、ラッキーおはよう!」
「…」
「どうしたの?」
「なんだか元気がないような」
明らかにラッキーの様子がおかしい。
虚ろな目をしているのが分かる。
「ちょっと…具合が悪いみたい」
「え?」
「大丈夫よ、もう少し寝かせてくれるかしら…」
「ラッキーちょっといい?」
アリスがラッキーに触れた。
「わ!ラッキー熱いよ?」
「…熱があるのかしら」
「大丈夫じゃないよ、お医者さんに見てもらわないと!」
「歩けるか心配だわ…」
「抱っこして連れて行ってあげるよ、準備するから待ってて!」
アリスが慌てて支度をする。
急がなくていいわ、と言いたいところだが今のラッキーにはその元気すら無い。
ラッキーはベッドから動かずにじっとしている。

「はい、お待たせ!」
「ラッキー大丈夫?」
「…なんとか」
「おいで、毛布で包んであげるね」
「…ありがとう」
雨合羽を着て外に出る。
幸いなことに小雨になっていた。
アリスはラッキーが濡れないようにしつつ、早歩きで街に向かう。
「ラッキー、もうすぐだよ」
「…痛いことされなきゃいいけど」
「それは分からないなぁ」
「でもラッキーは大人だから痛いの大丈夫だもんね」
返す元気が無いのか、ラッキーは黙っている。
そうこうしていると動物病院が見えてきた。
「ラッキー、着いたよ!」
「…そうみたいね」
受診を終えて二人が出ると、すっかり雨は止んでいた。
どうやらラッキーは風邪を引いていたようだ。
「注射されなくてよかったね」
「猫も…風邪引くのね」
「薬を貰ったから、これで大丈夫だよ」
「…頭が痛くなってきたわ」
「ほら帰るよ、ラッキー頑張ってね」
ラッキーを包んでいる毛布を整えてから、アリスが歩き出す。
一方のラッキーは黙ったまま腕の中でじっとしている。
しばらく歩いていると、ふとアリスが何かに気づいた。
「…あ」
雨が上がって、空にうっすらと虹が架かっていた。
くっきりと見えている訳では無いが、久しぶりに虹を見たアリスは大喜びだ。

「わ!ラッキー見て、虹だよ!すごい!」
「…あれ、ラッキー?」
疲れたのか、ラッキーは寝息を立てて眠っていた。
それを見てアリスは少し安心した。
「うるさくしてごめんね」
「…ちょっと休憩しようかな」
近くにあるベンチに腰を掛け、カバンから水筒を出した。
膝の上でラッキーはぐっすり眠っている。
起こさないように、アリスはそっと水を飲む。
「ふぅ」
「今日は何を食べさせてあげようかな」
「ヘンなもの作ったら怒られちゃう!」
「…おかゆとかかなあ、私も食べたいからそれにしようかな?」
膝の上で寝ているラッキーを見つめる。
変わらない寝顔を見て、アリスは思わず微笑んだ。
「ラッキーを抱っこしてると温かいな」
「ずっとこうしていたいけど、帰らないとね」
しばらくして、二人は無事に家に到着した。
すぐにラッキーをベッドに寝かせると、アリスはようやく一息ついた。
ごそごそとカバンの中をあさり、処方された薬を取り出す。
「1日3回、食後」
「忘れないようにしないとね」
「…これ、苦いのかなあ」
「気になるけど、舐めたら私も猫になっちゃいそう!」
「あとでラッキーに聞いてみよっと」
しばらくして、ラッキーが目を覚ました。
さっきまで病院に居たので、起きたら家に居た事にちょっと驚いているようだ。
「…アリス?」
「あ!起きた!」
料理する手を止めると、ベッドに駆け寄った。
朝より落ち着いた様子のラッキーを見て、アリスは安心したようだ。

「今日はね、おかゆを作ったんだよ」
「食べられそう?」
「ええ、なんとか」
「ご飯食べよっか、お薬飲まないといけないし」
「…ありがとう」
食事を終えると、アリスは袋から粉薬を取り出した。
普段見ないような色をしている。
「はい、ラッキーおいで」
恐る恐る舐めてみると、とたんにラッキーは鳥肌を立てた。
「(な、何この味は)」
「(余計具合が悪くなりそうだわ…)」
「(でも、この子にそんなこと言えないわ)」
どこか様子がおかしいラッキーを見てアリスが言った。
「…どうしたのラッキー、飲まないと元気にならないよ?」
「そ、そうね」
「飲んだらご褒美にお菓子食べさせてあげるね!」
「…今は要らないわ、でもありがとう」
ラッキーがなんとか薬を飲むと、アリスが背中を優しく撫でた。
「ちゃんと飲んだね、ラッキーはおりこうさんだね」
「…どうも」
「ねえねえ、どんな味だった?」
「とってもまずかったわ」
「そうなんだ…味見しなくてよかった」
「…」
ラッキーは眠くなってきたのか、ゆっくりとベッドに向かった。
「寝ててもいいからね、おやすみ!」
「…アリス、ありがとう」
ラッキーが目を閉じると、アリスはそばの椅子に腰掛けた。
「はやく良くなってほしいなぁ」
「…で、どんな味なのかな」
「ちょっとだけならいいよね、ラッキー見てないもんね」
後悔したのは言うまでもない。

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